美容医療が一般の方に浸透してきた今、美容医療に携わる看護師「美容看護師」にも注目が集まっています。
しかし、実際に美容クリニックで働く看護師がどんな仕事をしていてい、病棟とはどんな違いがあるのか、イメージが付かない方も多いかと思います。
今回は、美容看護師・フリーランスとして多くのクリニックに携わってきた筆者が、美容看護師と病棟看護師について実際の仕事内容やお給料の違いなどを踏まえてご紹介していきます。
病棟看護師とは
病棟看護師とは、入院施設である病棟で働く看護師のことを指し、患者さんのケア・療養上のサポートを行います。
世間一般的に想像される看護師の代表であり、多くの場合、夜勤を行うことも特徴のひとつでもあります。
病棟看護師の主な業務一覧
- 清拭・入浴介助などの清潔ケア、排泄ケア
- 採血・点滴・注射などの処置
- 与薬・服薬管理
- 配膳や食事介助
- 看護記録
- 手術・検査出し
- 予定入院の情報収集やオリエンテーション対応、退院支援
美容看護師とは
美容看護師とは、美容クリニックで働く看護師のことです。
最近ではテレビコマーシャルをはじめ、電車の中吊り広告、SNSなどでも美容クリニックの広告を目にするようになりましたが、そのようなクリニックで働く看護師の総称が美容看護師、または美容ナースです。
病棟の看護師でも自分が所属する科目によって取り扱う専門が異なるように、美容看護師にも美容外科・美容皮膚科・脱毛専門・アートメイク看護師などの専門科目が存在し、それにより細分化されます。
病棟で追い求めるものが「健康」であるように、美容医療の現場では「美」が追い求めます。
美容看護師は美容医療を通じ、お客様の今ある悩みを解決し、より美しく、綺麗になるためのお手伝いをしていきます。
美容医療とは私たちの生活の質(Quality ofLife)を向上させるために医学の知識と技術を利用して、私たちの姿かたちを美しくする医療分野のことです。
引用:国民生活センター 第1回 美容医療の現状といわゆるエステサロンと美容医療の違い
美容看護師の主な業務一覧
- カウンセリング
- 美容注射や点滴の投与
- 機械(レーザー・高周波等)施術の実施
- 医師の診療補助や手術の介助
- 医療器具の準備や滅菌
- 術後のアフターケア
- カルテ入力
- 受付や予約管理、院内清掃
- 院内在庫管理・発注
専門別:美容看護師の種類
病棟看護師が外科、内科、消化器内科、脳外科、と分かれるように、美容看護師もそれぞれ専門性の高い分野に分かれます。
ここでは、美容看護師の専門分野と仕事の特色を簡単にお伝えします。
美容外科
美容外科は、二重埋没や豊胸、脂肪吸引など、麻酔やメスを使用して外科的な手術を行う領域です。
そのため美容外科で働く看護師は主に手術の介助、術前、術後の管理などを行います。
病棟で言うオペ看に近い立ち回りをすることが多いです
手術の内容によっては医師1人、看護師1人の計2名で手術に臨むこともあり、医師との連携や緊急時への適切な対応力などが求められます。
美容外科では手術前後に精神が不安定になってしまう患者様も少なくないため、患者様の不安に寄り添うようなコミュニケーション能力もとても大切となってきます。
また、小規模なクリニックでは手術で使った機械の洗浄や滅菌なども行います。
加えて、ボトックスやヒアルロン酸の注入などの「プチ整形」と呼ばれる施術も多くの美容外科で取り扱っており、それらの薬剤の準備や介助も美容看護師の仕事です。
美容皮膚科
美容皮膚科は、主にレーザー機器を使用しシミやしわの改善、ホクロの除去、たるみの予防・改善などを行う領域です。
メスなどは使わず侵襲が少ないため、エステと混同されることもありますが、もちろん看護師免許保有者でなければ美容皮膚科の看護師になることはできません。
また、近年では医師施術ではありますが、ヒアルロン酸注入やECM製剤などの注入治療も美容皮膚科領域で多く取り扱われるようになりました。
数年前までは注入系は外科領域であることが多かったですね
美容皮膚科の看護師は、レーザーや高周波治療器などの医療機器を操作しての施術を主な仕事内容とします。
基本的に患者様1名に対して看護師1人で対応することになるため、患者様と会話をする場面も多く、コミュニケーション能力が求められます。
また、医師が施術のメインとなる美容外科とは異なり、自身が施術をメインで行う側になるため、正しいレーザーの取り扱い、正確さ、丁寧さなどが求められます。
そのため、患者様からの良い声も悪い声もダイレクトに私たちに届くのが美容皮膚科の特徴でもあります。
医療脱毛専門
医療脱毛専門は、美容皮膚科に分類されることもありますが、近年では専門性が高まり、医療脱毛のみを取り扱うクリニックが急増しました。
医療脱毛のみを取り扱うクリニックで働く美容看護師のことを、脱毛看護師とも呼びます。
脱毛看護師は名前の通り、脱毛機器を取り扱い、脱毛の施術を専門的におこないます。
脱毛の施術中は患者様と会話をすることが多いため、皮膚科同様にコミュニケーション能力が求められます。
また、施術中は基本的に身体を動かしっぱなしになるため体力が必要とされます。
全身脱毛だと約2時間くらいはかかるので、2時間お話しできるくらいのコミュニケーション能力は欲しいですね
脱毛看護師は、今では美容看護師の登竜門的な存在になっており、新卒からでも採用しているところが多いのも特徴です。
脱毛専門のクリニックでも、美容点滴、美容注射などは取り扱っているところもあります。
アートメイク
近年、特に人気が高まってきているジャンルのひとつと言っても過言ではないのがアートメイクの分野です。
アートメイクは特殊な機器を用いて、皮膚に色素を注入することで唇に色を付けたり、眉毛の形を整えたりする技術の事を指し、この施術を行う看護師をアートメイク看護師と呼びます。
アートメイク看護師はお客様の顔や全体のバランスを見て、美しく見えるようなデザインを描いていかなければいけないため、デザインセンスが問われます。
また、アートメイク看護師は指名制を導入していることが多く、アートメイクが終了するまで継続してお客様と関わっていくため信頼関係の構築やホスピタリティもより求められる存在になります。
その他
今までご紹介してきた分野以外にも、痩身専門の美容クリニックやAGA専門、再生医療専門のクリニックなども美容医療の分野として存在します。
AGAとは、AndrogeneticAlopeciaの略で、男性ホルモン型脱毛症(男性型脱毛症)のことです。
引用:AGAスキンクリニック
他にも、美容医療の領域と近しいところでは審美歯科やICL(眼内コンタクトレンズ)などもあり、看護師の活躍できる場はとても多いことが伺えます。
病棟看護師と美容看護師の違い
ここまで「美容看護師とはどんな看護師なのか」についてお話しをしてきましたが、仕事の内容、領域としての違い以外に病棟看護師との明確な違いについてお話ししていきたいと思います。
美容看護師はサービス業
美容クリニックの料金表を見たことはあるでしょうか。
例えば、大手美容クリニックではボトックス注射が1部位8,000円、1回のシミ取りレーザーが15,000円前後します。
かたや、個人経営の美容クリニックでは同じメーカーの製剤を使用したボトックス注射でも1部位15,000円だったり、1回のシミ取りレーザーが30,000円だったりします。
この2つのクリニックの料金設定が異なる理由は、美容医療は自費診療であるためです。
保険診療の病院ではどの地域のどの病院で診察を受けても、診察内容が同じであれば治療費は一律同じになります。
しかし、美容医療の分野では一部の施術の除き、ほとんどが自費診療のため全額自己負担となります。
そのため、医師やスタッフの技術力、使用する薬剤、クリニックの立地、使用物品などを加味してクリニックが価格を決定することができるため、クリニックによって料金設定がバラバラです。
上記の違いから、美容クリニックを利用される患者様は「高額な支払い=素晴らしい技術力、治療効果への期待、ホスピタリティーやサービスの質」への想いが高まり、より良いモノを求められます。
美容看護師は患者様に満足していただくために、正しい知識と技術に加え、ホスピタリティも求められるため、サービス業としての側面が強くなるのが特徴です。
美容看護師になって一番最初の研修は接客接遇の研修でした
給料・インセンティブ
前項でも述べたように、美容医療は自費診療であるため治療の価格設定はクリニックが自由に決めることができます。
そのため、リスクの高い手術を取り扱うクリニックや名医と呼ばれる先生のクリニックなどでは患者様の単価がとても高くなる傾向にあります。
また、院内では化粧品の販売や美容グッズの販売なども行っているクリニックも多く存在し、クリニックの売上が内部で働くスタッフの給料に反映されるため、病棟よりも給料がやや高くなる傾向にあります。
加えて、売上に応じてインセンティブ(報奨金)が支払われるクリニックもあるため、美容看護師は看護師の中でも高給取りと言われる要因となっています。
ボーナス
美容クリニックではインセンティブ制度がある代わりにボーナスがなかったり、ボーナスはあるものの少額であるパターンが多いです。
実は、美容クリニックは基本給がそこまで高くなく、手当やインセンティブで給料を上げているクリニックも多く存在しています。
これは、美容クリニックの多くが基本給を低く設定しており、手当やインセンティブなどで給料を上げているのが理由になります。
ボーナスは「基本給×何か月分」という計算方法が採用されているため、基本給が少ないとボーナスの価格も低くなってしまう傾向があります。
そのため、病棟看護師から美容看護師に転職をして「毎月の手取りは増えたけど年収はそこまで増えなかった」というパターンをよく目にします。
美容看護師への転職は基本給と年収を確認しよう
ノルマ
病棟とは異なり自費診療である美容クリニックは「売上=スタッフのお給料」となるため、一定のノルマや売り上げ目標を設けているクリニックも存在します。
「目標を達成できなかったから減給」と言った厳しいペナルティがあるわけではありませんが、目標が未達成の場合はインセンティブが支払われません。
自費診療の美容クリニックは頑張っただけ頑張りが反映されやすい環境ではありますが、売り上げや業績により、お給料が変動することがあるので注意が必要です。
売り上げを出せればインセンティブが手取りを超えることもあるので美容看護師は夢があります
勤務時間
病棟での勤務といえば、外せないのが「夜勤」の存在です。
病棟に入院している患者様たちは、24時間病気と闘い続けているため看護師や医療従事者の介助が必須です。
しかし、美容クリニックは基本的に健康な人がより美しく、よりQOLをアップさせるために行う治療になるため、夜勤帯の介助は不要となります。
そのため、美容クリニックは基本夜勤無し、日勤帯のみの勤務となります。
また、多くの美容クリニックは健康的な生活を送っている人が治療の対象となるため、仕事帰りの方や主婦などが利用しやすいよう営業時間をずらしています。
それに合わせて、美容看護師たちの勤務時間も10:00-19:00や11:00-20:00と言ったように、一般的な病棟やクリニックよりも始業・終業時刻が遅い傾向にあります。
繁忙期の外科クリニックは夜勤帯までやってることがあるので注意です!
病棟や一般のクリニックは18時頃に帰宅できるのに比べ、美容看護師は仕事の終わりが遅いので、やや夜型の生活になってしまうことがあります。
シフト・休み
病棟の看護師は基本的に2交代・3交代制で日勤と夜勤のシフトが組まれており、シフトのバランスによっては土日や祝日が休みであったり夜勤明けであることも多いです。
しかし、美容クリニックでは一般の方がお休みのタイミングが繁忙期にあたるため、土日や祝日・夏休みや長期休みはかなり取りずらい傾向にあります。
美容クリニックもシフト制ではあるものの、土日の休み希望が出せなかったり、1回まで、と制限がかかっていたりするので、家族がカレンダー通りのお休みの方は注意が必要です。
病棟看護師と美容看護師の比較表
病棟看護師 | 美容看護師 | |
仕事内容 | 保険診療 | 自由診療 |
勤務形態 | 日勤・夜勤 シフト制 | 日勤のみ シフト制 |
給与 | 手取り27万円前後 (年収500万~600万) | 手取り32万円前後 (年収450万~750万) |
対象 | 病気をしている人 | 健康な人 |
目的 | 病気の治療 | コンプレックス解消 QOLの向上 |
スキル | 疾患への知識 患者に寄り添う能力 | 解剖生理の知識 接客接遇 コミュニケーション能力 |
最後に
病棟看護師も美容看護師も、そこにしかないやりがいと専門性があります。
近年では美容看護師の活躍も目覚ましく、定期的に学会やイベントなども開催されています。
双方の違いを良く理解し、なりたい自分、キャリアについて考えてみてはいかがでしょうか。
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